一般に共格を持つ言語では,共格の有生名詞がassociativeの意味を,共格の無生名詞がinstrumentalの意味を表すことが多いようだ.だが,サハ語では,共格接辞の付いた名詞句は,有生名詞の場合も無生名詞の場合も,主語と同時に同じ動作をする名詞句(associativeもしくはreciprocal)として解釈される.本発表では共格名詞が有生の場合と無生の場合との違いに着目しながら,共格の用法を検討した.
無生の共格名詞には所有接辞を付けることができない.発表者は,無生名詞に所有接辞を付けることが出来ないのは,主語との所有関係が義務的であるためと解釈する.
述語の一致の仕方や所有接辞を付けられるかどうかという点から見ると,有生名詞の方が独立した動作者として扱われるのに対し,無生名詞は主語に付随しているものとして扱われている.