現代フランス語における接続法の多様性について

守田 貴弘(東京大学大学院)

 接続法の研究では固有の意味の有無がしばしば問題になる。古典的研究では固有の意味が議論される一方で、近年の文法化研究では、従属節内のムード・モダリティはほとんど意味を失っているとされることが多い。これらに対し本発表では、主動詞に義務的に一致する接続法だけでなく、同一の動詞下で直接法と交替する例が多いことをあげ、法の交替の有無、交替がある場合の意味の差異化の明確さから、直説法と接続法の対立が3パターンに分かれることを示す。その3つとは、法の交替を許さないタイプ、法の交替が法に固有の意味に基づいているタイプ、そして交替の原因が文体など、広い領域に拡散しているタイプである。

 また、古仏語との比較によって、共時的に存在するこれら3つのパターンは歴史的変化の中に位置づけられることについても言及する。