「態度が一変した」「太郎は態度を一変した」の「一変する」のように,対応する他動詞を有する有対自動詞「VNする」を使役化すると「太郎が態度を一変させた」のような自然な文が得られる.しかし,このような事実は先行研究(宮川(1989))の予測とは相容れない結果である.宮川(1989)では,有対自動詞の場合,対応する他動詞が自動詞の使役形をブロック(妨げる)するため,有対自動詞の使役化は不可能になると述べている.実際,この予測は,「解決する」のような他の有対自動詞「VNする」に関しては当てはまる(*太郎が問題を解決させた).
有対自動詞「一変する」はなぜ使役化が可能なのかという問題に対して,本発表では次のように分析した.他の他動詞(「解決する」)とは異なり,「一変する」の他動詞は,(a)(b)のように主語と目的語の間にいわゆる再帰的な関係が存在する場合にのみ成立するが,このような再帰的な他動詞は自動詞の使役化を積極的にブロックしないため,有対自動詞「一変する」の使役化が可能になるのである.
(a) 太郎が自分の態度を一変した (b) *太郎が花子の態度を一変した