本発表の目的は、南琉球宮古伊良部島方言を対象に、これまでの宮古方言の研究で「複合名詞」と呼ばれてきた形式を品詞分類の観点から再考することである。問題にする形式は、形式名詞munu(普通名詞munu「もの」が起源)を主要部とする複合形式(以下、M複合形式)である。M複合形式はこれまで単に「複合名詞」と記述されてきたが、この形式は動詞のような性質も持ち合わせており、単純に名詞と分類することには問題がある。本発表では、これまで注目されてこなかった名詞らしくない点を中心に記述する。具体的には、他動性を保持できる点と、談話における述語位置での使用への偏った分布を示す。