引用から提題へ ―いわゆる“提題”の「ッテ」について―

岩男 考哲(大阪大学大学院)

 まず,同じ「ッテ」を用いて主題を表している表現(以下「Xッテ~.」と記す)であっても,そのX部に多分に引用の性格が残存しているものと,その性格が薄れ「ハ」に代表される提題の表現へ接近しているものとが存在すること,そして,この両者は連続的なものであることを示した.また,こうした捉え方をすることで説明のつく現象も幾つか提示した.

 また,こうした「Xッテ~.」は「ある要素(X部)を発話に導入し,述部において何らかのコメントを加える」という性格の表現であるという仮説を提示した.この仮説により,なぜ「ッテ」が提題の形式として扱われるのか,「捉え直し」の意味はどのように生じるのか,そして,「Xッテ~.」のX部が引用の性格を喪失した場合,そのX部に格助詞が生起しないのはなぜか,といった点が説明できることを示した.