日本語使役動詞の脳内処理メカニズム:事象関連電位による研究
高祖 歩美(東京都立大学大学院)
曽雌 崇弘(東京都立大学大学院)
伊藤 たかね(東京大学)
杉岡 洋子(慶応義塾大学)
萩原 裕子(東京都立大学)
曽雌 崇弘(東京都立大学大学院)
伊藤 たかね(東京大学)
杉岡 洋子(慶応義塾大学)
萩原 裕子(東京都立大学)
日本語の語彙使役(e.g.「並べる」「抜く」)とサセ使役(e.g.「並ばせる」「抜けさせる」)は、前者はレキシコン、後者は統語部門で扱うという分析が提唱されてきた。
本発表では、サセ使役には演算処理が、語彙使役にはネットワーク的な記憶という異なる脳内処理メカニズムが関わっているという作業仮説の妥当性を、脳波の一種である事象関連電位 (ERP) を用いた実験により検証した。その結果、語彙使役の非文では選択制限違反を反映するN400、意味的統合の負荷を反映するP600 という脳波パタンが出現したのに対して、サセ使役の非文では語彙使役文とは異なる統語的処理の介在を示唆する(左)前頭部陰性成分が観察された。よって、言語処理に2つの異なる心的・脳内メカニズムが関与するというPinker(1999)らの二重メカニズム仮説が、日本語の使役動詞の処理にも適用できることが明らかになった。