本発表では、アイヌ語十勝方言の継続相を表す分析的形式kor an「~している」の用法を実地調査に基づいた資料により検討した。
十勝方言におけるこの形式には、1人称主語が表示された動詞と共起しないという制限の存在することが明らかとなった。一方、1人称主語の動作の継続には他の分析的形式が用いられる。このことから、kor anを用いた表現は、アスペクトに関与するのみならず、一種の中立的な視点を要求する表現であり、直前にある発話者自身の視点を示す1人称の表現と相反する可能性が考えられる。