いわゆる順序助詞のマデ句と数量詞遊離構文の意味論の類似性と相違点について

田中 英理(日本学術振興会特別研究員・大阪大学)

 本稿では、順序助詞(奥津(1966))としてのマデ句が数量詞遊離構文における数量詞と意味論的に同等の機能を果たすことを示す。順序助詞のマデ句はスケールを導入してそれが関連する名詞句をそのスケール上に順序付け、この順序付けられた名詞句と動詞句が対応すると理解される。本稿では、マデ句は実際には動詞句を修飾し、Nakanishi(2003)の分析による数量詞遊離構文における数量詞と同様に、イベントに対する単調性の制約に従う測量関数である、と提案する。本分析は、結局、マデ句が数量詞であることを主張することになるが、実際、他の数量詞や否定とスコープの相関関係を示すことからも本分析は支持される。相違点として、マデ句は数量詞と異なり、部分解釈をもちやすく、これが個体レベル・ステージレベル述語における両者の容認性の違いを説明する。