本発表では、接辞(s)aseを用いた複合述語による日本語使役文の統語構造の分析を行う。まずは、Kuno (1973)らに従い、複合述語による使役文は複文構造を構成しているという立場を取り、他動詞の語幹に接辞がついたタイプの統語的特徴を概観し、「二格名詞句+ヲ格名詞句」の語順で内項が構成されている場合と「ヲ格名詞句+二格名詞句」の語順になっている場合の統語的差異を指摘する。後者の場合、ヲ格名詞句が主節位置に基底生成され、構造上、二格名詞句よりも高い位置に存在し、従属節内にproが存在しているというProlepsis分析を提案する。また、自動詞の語幹に接辞がついた場合には、内項に二格名詞句とヲ格名詞句をとるパターンがあるが、後者の場合に従属節内にproが存在している統語構造を提案する。これら使役文の統語分析を通じて、ECMなどとの類似性を論じ、日本語における対格付与のメカニズムに迫る。