本発表では、構文理論の立場から、no more/less…than構文の統語論的、意味論的、そして談話的特徴を明らかにし、それらの特徴が2つの認知制約によって統一的に説明可能であることを論証した。すなわち、no more…than構文では、比較節の命題は成立可能性のスケール上で低く捉えられ、主節の命題はそのレベルまで格下げされる。一方、no less…than構文では、比較節の命題は成立可能性のスケール上で高く捉えられ、主節の命題はそれと同じレベルに格上げされる。
さらに、本発表では他の比較構文との比較により、以下の仮説を提出した。
比較文に関するパラメター仮説:「比較文には、(ⅰ)「命題の成立可能性/属性の程度性に関する比較」という(スケール基準に関する)パラメターと、(ⅱ)「2つの比較対象をスケール上で中立的/非中立的に捉えている」という(捉え方の有無に関する)パラメターがある。
この仮説から比較構文には4つタイプのバリエーションがあることが明らかになった。