古アジア諸語のチュクチ・カムチャッカ語族に属するアリュートル語には所有・存在をあらわす形式がいくつかある。そのうち被所有者に標示のつく2つの形式（GA形・LH形）をとりあげ、それぞれの意味と用法を示した。
これまでの研究では、これらの形式のうち一方は名詞の一種（LH形）、もう一方は形容詞の一種（GA形）とされてきた。しかし、いずれも「～もちの」という意味をあらわし、用法も重複する部分がある。本発表では各形式の意味に注目して資料を再検討し、次の点を確認した。形容詞の一種とされているGA形は、述語としてもちいられることが多く、被所有者の存在が問題になっているときにもちいられる。名詞の一種とされているLH形は、名詞を修飾するばかりではなく、自立した名詞のようにもちいられることもあり、所有の意味をあらわすこともあるが、むしろ所有者の属性をあらわすのにもちいられる。