アタ語(パプア諸語、パプアニューギニア)の独立代名詞の非単数指示とその統語機能ついて

柳田達也

 本発表は、パプアニューギニアのニューブリテン島中部に分布するパプア系言語アタの独立代名詞の統語機能について、非単数指示に焦点を当てて考察した。

 アタ語は主要部標示型言語であるが、独立代名詞が談話の構造で重要な役割を果たす。アタ語の文法的数の体系は単数-双数-少数-複数の対立を示し、独立代名詞に文法化された双数-少数-複数の対立は、動詞の接辞や接語が標示する単数-非単数の指示を明示し、談話の構造を統語レベルから支えている。双数は、1/2/3人称単数+3人称単数男性、あるいは、1/2/3人称単数+3人称単数女性という指示構造を持ち、少数については、1/2/3人称単数+3人称双数以上という指示構造を持つため、文法的数の認知という観点からは、独立代名詞の非単数指示は単数-単数以上という対立が双数-小数-複数の対立に重なるように体系化され、文法的数そのものよりも指示対象の対比に重点があることを示した。