本発表では、まず「前」、「半分」等の相対名詞(奥津(1974))の基点を定める修飾節CP((1))の統語構造に関する提案を行う。時制・場所句のVector Space Semanticsを反映したPP構造(Watanabe(2008)他)に基づいて相対名詞の統語構造を考察すると、(1a)のPP内には非顕在的な名詞「TIME」が存在し、従って修飾節CPはそれを主名詞とする関係節であると分析されねばならない。同様に、(1b)のDP内には非顕在的主名詞「AMOUNT」が存在する。本発表では、更に、そうした非顕在的主名詞の生起が想定される構造的位置での、対となる顕在的主名詞の生起可能性に関する一般化を提示し、「移動のコピー理論」に基づきその説明を試みる。
(1) a. [PP[CP戦争が終わる]三日前に]母は死んだ。
b. 太郎は[DP[CP花子が家賃に使う]半分を]ギャンブルに使う。