発話者志向の語用論:「けど」の手続き的意味を通じて

尾谷昌則(東北学院大学)

 本発表では、接続助詞ケドが持つとされる様々な用法について包括的に分析した。Sperber & Wilson(1986), Blakemore(2000)などが提唱している関連性理論(Relevance Theory:RT)の枠組みによる先行研究(Itani1992, 1996、永田・大浜2001)を検討し、聞き手志向だけの分析ではケドの用法を十分かつ包括的には説明できないことを指摘した。その上で、発話者志向を強く意識している認知言語学(Cognitive Linguistics:CL)の視点も取り入れ、ケドの手続き的意味を再検討すると共に、それが主体化(Subjectification)するプロセスとその動機付けを示した。これにより、発話者志向の語用論という視点の重要性を示し、前提としている言語観こそ違うRTとCLではあるが、具体事例を分析する際にはむしろ協調できるという展望を示した。