フランス語のNP qui ...構文は、意外な事態に対する驚き、先行文との対比、事態の発見、といった様々な意味を表わすが、文全体を焦点とする強調構文と分析することにより、これらの一見雑多な意味を統一的に捉えることができると主張した。まずこの分析の論拠として、英語の強勢による焦点化構文と同じ制約が課されることを挙げた。
次に日本語の否定的特立を表わす「なんて」を含む文との意味的類似性を指摘し、当構文を「焦点となる事態が範列的関係をなす他の事態の集合に属さないことを含意する文」、と特徴付けた。さらにこの含意を表現するうえで、変項に値を付与すべき主節の不在が重要な役割を担うと指摘した。
そして焦点事態と範列的関係をなす事態の集合が、話者の想定から得られる場合「驚き」を、先行文から推意によって得られる場合「対比」を、非明示的であるため漠然としたものとなり背景化する場合「発見」を、表わすと論じた。