本発表では,フランス語の感嘆文が有する不完全な述定という特徴に注目して,形容詞+名詞の形式,関係節や従属節による感嘆文について,また日本語の「こと」による感嘆文にも触れながら考察を行った.まず感嘆文のこの特徴は,P(命題)をasserter<断定・主張>しない,Pの真偽を議論しないための手段であることを示した.またさらに断定・主張しない,Pの真偽を議論しないのはなぜか,という問題に取り組むことによって,感嘆文には,二種類のタイプがあることがわかった.一つは,Dhorne(2003)で指摘されているPが既構築(préconstruction)であるタイプの感嘆文であり,もう一つは,Pが発話者/共発話者の間で構築されず,Pを主観のままで終わらせる自己完結なタイプである.また,このような自己完結的な性質が共発話者に対する三人称の使用という形で人称にも表れることを実例によって示した.