「XはXでない」に対立する形で発話されるトートロジー「XはXだ」(差異否定型トートロジーと呼ぶ)に関して、次の4つの点を明らかにした。(i) ラディカル意味論の予測に反し、差異否定型トートロジーは日仏語間で一般に翻訳可能である。(ii) ラディカル語用論の予測に反し、日仏語の差異否定型トートロジーは自明の理や恒真命題を表す発話と異なるふるまいをする。(iii) メンタル・スペース理論に基づく解釈スキーマによりラディカル意味論とラディカル語用論の抱える問題を克服することができる。(iv) 仏語とは異なり、日本語においては「XはXだ」という形式を構文として認める必要がある。(v) ディープ・トートロジーは差異否定型トートロジーのメタ言語的用法に過ぎず、その翻訳可能性は差異否定型トートロジーの翻訳可能性からの必然的帰結である。