本発表では相互・再帰の曖昧構文について特に日本語の「V-合う」構文の獲得を中心に考察する。「V-合う」構文は相互、再帰、競争・協力の解釈を与えうる。Mohanan& Mohanan (1998)は相互・再帰の解釈の可能性を動詞接辞の語彙指定における(I)-(III)の値の違いに帰する分析案を提示している:(I)項構造の変化の有無、(II)同一指標が義務的か否か、(III)同一指標を持つ場合、解釈の指定があるか否か。この提案の下では「‐合う」の語彙指定では(I)項構造の変化及び(II)同一指標が随意的であり、(III)解釈の指定はない、と分析される。
この分析は言語獲得過程に関して、子供が(A)競争・協力の解釈を与える割合及び(B)再帰の解釈を与える割合は年齢があがるにつれて低くなることを予測する。子供の「V-合う」構文の解釈を調べた結果は予測に一致しており、上記の分析案は支持されうる。