名詞を修飾する「…タ」には,具体的な一事象として解釈できるものの他に,形容詞的に解釈できるものが存在する.本発表の目的は,これらがどのように解釈し分けられるかを明らかにすることである.
形容詞的解釈では,状態変化の結果状態に関わる項は写像され,関わらない項は抑制されるとされているが,以下のような問題となる例がある.1) 主名詞が外項であるように見える構造,2) 修飾句内に外項が現われてあたかも形容詞的であるかのように解釈される場合,3) 行為を修飾する付加詞が現われて形容詞的に解釈される場合.
しかし,実際は,1) の外項は直接内項であること,2) は,事象が複数回起こりうるものとして解釈されること,3) は,付加詞が動詞と一体となって一個の行為を表わすため,結果状態に関わることを考察する.これにより,形容詞的に解釈される構造では,主名詞は直接内項に限られ,また,上記の例は反例ではないことを示す.