オセアニア諸語に見られる音変化の考察
-オセアニア祖語との比較から-

内藤 真帆(京都大学大学院)
千家 愛子(東京女子大学大学院 研究生)
佐藤 寛子

ヴァヌアツ共和国で話されているツツバ語とヴァラサフ語、パプアニューギニアで話されているコーヴェ語は、全てオーストロネシア語族のオセアニア諸語に属する。本発表では発表者各自が収集した言語資料から、これらの言語の語彙とオセアニア祖語の語彙とを比較し、音の対応関係に関する違いを考察した。

考察の結果、顕著な違いを示す例として、祖語の *nsがツツバ語ではs、ヴァラサフ語ではs, tsに対応し、コーヴェ語では ɻ が対応している例や、*がツツバ語ではɾ, Ø、ヴァラサフ語ではr, Øに対応し、コーヴェ語ではh, lに対応する例などが挙げられる。

このようにいくつかのオセアニア祖語と対応するそれぞれの言語の音素には違いが観察された。特にツツバ語・ヴァラサフ語の対応とコーヴェ語の対応には大きな隔たりがあり、同じオセアニア諸語に属する言語であっても、異なった音変化を経て発展した言語であることが分かった。