本発表ではまず、通常同節否定辞による認可を必要とするロシア語ni-系列否定極性表現や否定生格に関し、主語制御構文だけでなく目的語制御構文においても、主節否定辞から”長距離”に認可される場合があるものの、その場合、主節と不定節のアスペクトが調和していなければならないことを指摘した(Ja ne ugovorivala<i>/*ugovorila<p> Natashu [chitat'<i> takih knig]. 等参照; iとpはimperfective、perfectiveの略)。
また否定極性表現が用いられていなくても、主節否定の目的語制御構文で、不定節が1回きりの限界的事象を表す場合に、肯定文の場合と違った不完了体不定節動詞の選択が可能となることがあるが、それも主節と不定節でアスペクトが調和している時に限られている。これらの点を、目的語制御構文で節の随意的一体化(マージャ)が生じるためには、アスペクト調和原理が満たされる必要があると考えることにより統一的に説明した。