現代モンゴル語“副動詞+bayi-”形のアスペクト

松岡 雄太(九州大学大学院)

本発表では現代モンゴル語の“副動詞+bayi-”形におけるアスペクト的意味の実現に副動詞になる動詞の<限界性 (telicity)>が関与的であることを主張した.

現代モンゴル語の“副動詞+bayi-”形には“-ju bayi-”形,“-γad bayi-”形,“-γsaγar bayi-”形の三種類がある.このうちの“-ju bayi-”形と“-γsaγar bayi-”形には「進行」と「結果の持続」の二つの意味があり,“-γad bayi-”形には「重複」と「已経」の二つの意味がある.本発表では,前者において「結果の持続」の意味になる動詞群と,後者において「已経」の意味になる動詞群が一致することを示し,これらの動詞を「限界動詞 (telic verb)」,それ以外の動詞を「非限界動詞 (atelic verb)」として区別する必要性を論じた.それによって“-γad bayi-”形の二つの意味が,この動詞の限界性と“-ju bayi-”形の二つの意味から予測できることを示した.