本研究では「話し手の意志を表す」とされる終結語尾‘-lkey’, ‘-llay’を対象として,会話資料に基づき,両形態の用法の違いを考察した。
その結果,‘-lkey’は話し手がこれから行おうとする行為について「聞き手に受け入れられる」と話し手が判断する場合に使用されることが明らかとなった。一方,‘-llay’は相手の提案や勧誘に同意せず,自分の意志を述べる際に用いられる傾向が見られ,話し手の行為が「聞き手に同調されにくい」と判断される場合に使用されるという語用論的特徴を有することを指摘した。さらに,安達(2002)による意志形「しよう」,基本形「する」の観察から「しよう」は対話的・非対話的な両環境で使用できるが,‘-lkey’, ‘-llay’は対話的な環境でのみ使用されること,‘-lkey’, ‘-llay’には「しよう」に見られる意志から勧誘への意味拡張が見られないことを指摘した。