日本語と英語におけるイントネーション・ユニット
-日本語発話は本当に断片的か?-

作田 千絵(東京大学大学院)
藤井 聖子(東京大学)

本発表では、日本語と英語におけるイントネーション・ユニット(IU)を内部的な統語構造の側面から分析した研究を報告した。

IUは、一続きの音調曲線の連続性や前後の休符といった特徴により聴覚的に聞き分けられるまとまりをもった発話単位だが、IUが英語よりも日本語において統語的に断片的な傾向を持つか否かという点を、Matsumoto(2000, 2003)に基づく分類方法を用いた分析で検証した。

日英語の語り談話におけるIUの統語的構造を計量的また質的に比較分析したところ、日本語のIUは英語に比べ、独立節の形が少なく他のIUと共に節を形成する句であることが多いなど、確かに断片的であり、中でも主語の句が独立のIUに分断化されることが多いことが示された。また、日本語では主語省略がない場合に、目的語等が単独でIUを形成すると、主語も述語部分から離れる傾向にあり、言語差の一因となっていることが認められた。